~心理解説ノート~
新紙幣発行にまつわる心理について

テレビ番組『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日) にて、心理解説が放送になりました。
ポイントをまとめておきたいと思います。



1.興味関心が高まり、尊敬すべき対象という社会通念に影響⁈
2.目新しいものを使うことによる意欲の向上
3.キャッシュレス・SNSなどの影響でユーモアと親しみをもって話題に



1.興味関心が高まり、尊敬すべき対象という社会通念に影響⁈

1984年には、一万円札の肖像が福澤諭吉になりました。
発行開始の1958年頃には1万3千円ほどだった大卒初任給も、約13万円と10倍になり、1万円札の特別感も変化。肖像も聖徳太子よりも存在を実感しやすい文化人となり、「諭吉さん」と親しみを感じさせる呼び方もされるようになりました。2004年は、五千円札に樋口一葉の肖像が採用されましたが、1984年には34.5%だった女性の大学進学率もほぼ50%となり、共働き世帯が急激に増加していく時でもありました。

当時の社会の様子や変化も感じさせる肖像ですが、肖像が社会に与える影響もあると思います。
お札の肖像が決まると、縁ある人たちが、喜び、誉に思い、所属コミュニティへの関与意識やイメージがアップしたり、その他の人からの関心も高まります。 「文化的な貢献のあった人」「苦労も多かった日本初の女流作家」……といった、選ばれた人の属性や特徴が、“尊敬されるべきもの”と認識され、そのような人は重んじられるべきなんだという社会通念に影響をもたらす面もあるでしょう。




2.目新しいものを使うことによる意欲の向上

いつも買っている食品や消耗品も新しいパッケージになるとなんだか嬉しく、(よほど嫌なデザインでない限り)購買欲もアップします。飽きるという心理は、人間が本来もっているひとつの特徴で、新しい刺激というのは、新天地を求めたり、工夫したり、生存確率を高めるためにプラスに働くと考えられています。
目新しいものを見たり使ったりすると、意欲が高まるという傾向もあります。 これまで慣れ親しんできたデザインとは別のデザインのお札を初めて目にし、使ってみる時というのは、多少なりとも楽しい気分になる可能性があります。
「最初に手にした1万円札では〇〇を買おう!」といった“記念”や“遊び心”をしばらく楽しめるかもしれません。




3.キャッシュレス・SNSなどの影響でユーモアと親しみをもって話題に

新元号「令和」の発表時にも、発表前はさほど興味関心をみせていなかった人たちも、画像処理を加えた投稿などで、新元号をユーモアや親しみをもって好意的に話題にするといった行動がみられました。
2024年ともなれば、ますますキャッシュレスが進み、現金というものに対するイメージも変わっていく時代。新しい肖像で登場する新紙幣は、共通する関心事として、ユーモアと親しみをもって好意的に話題にされるのではないでしょうか。